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成猫の直腸脱
 患者さんは8歳のシャム系雌猫(不妊済)です。直腸脱をおこしているとのことで受診されました。直腸脱とは腸管が肛門から飛び出してしまう疾患で、今回は脱出した腸管の粘膜が赤黒く変色し、異臭がするほど強い炎症を起こしていました。そのため、炎症を起こした腸管を外科的に切除しなければならない状態でした。
 直ちに全身麻酔を施し、超音波手術装置を用いて、脱出した腸管を切除しました。超音波手術装置(オリンパス社製、ソノサージ)は、最近導入した最新鋭の外科機器で、まったく出血が見られず、短時間で手術を終えることが出来ました。当院では、超音波手術装置を用いることにより、これまで以上に負担の少ない手術を行うことが出来るようになりました。
 患者さんは手術4日後に正常に排便しフードも食べ始め、7日後に退院しました。退院後、フードを食べない日が数日ほど続いたため、通院で点滴を行いました。手術20日後にはワクチン接種ができるほど元気になりました。
 さて直腸脱ですが、成猫では発生が極めて珍しく、国内では私が2007年に専門誌、獣医畜産新報で発表した1例しか見あたりません。珍しいと言われている疾患に再び遭遇するとは思ってもいませんでしたが、過去の経験と最新鋭の外科機器により、手術は極めてスムーズに実施することができました。
肛門から腸管が数センチほど飛び出しています。 飛び出した腸管は、赤黒く変色していました。点線は切断箇所です。
切断・縫合後の写真ですが、出血はまったく見られませんでした。 手術後の肛門部ですが、きれいな状態になりました
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