さとう 動物病院
 長野県 千曲市
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猫の突発性前庭疾患
 
 患者さんは13歳の雌猫です。体重は2.9kg。3〜4日前から腰がふらふらし、ほとんど歩けないとのことで受診されました。嘔吐と流涎(よだれ)を認め、飲食はまったくできない状態でした。院内で歩かせてみたところ、右側への高度の斜頚がみられ、腰が抜けたような状態でほとんど歩くことができませんでした(写真左参照)。たとえ歩こうとしても、斜頚のため右側への旋回運動となり、これらの症状から突発性前庭疾患と診断しました。犬での本病の発生は高齢犬に多く認められ、老齢性前庭症候群とも呼ばれていますが、猫では年齢に関係なく発生します。6月から9月にかけての発生が多いようですが、今回の発生は3月末に認められました。

処置と経過は以下のとおりです。
 1日目:高用量のステロイド剤を投与するとともに、皮下への点滴を行い、複合ビタミン剤と抗生物質も投与しました。ステロイド剤は脳浮腫を抑える目的で、点滴とビタミン剤は栄養補給、抗生物質は感染症を予防する目的で投与しました。嘔吐が認められたことから、制吐剤も投与しました。
 2日目:腰抜け状態がかなり改善され、嘔吐と流涎も見られなくなりました。斜頚はあまり改善されませんでした。処置は前日と同様に、高用量のステロイド剤、皮下への点滴、複合ビタミン剤と抗生物質を投与しました。
 3日目:まだ飲食できないとのことで、前日と同様の処置を施しました。
 4日目:動きはかなり改善されましたが、まだ飲食できないとのことで、前日と同様の処置を施しました。
 5日目:飲食ができるようになったとの電話連絡を受け、ステロイド剤の漸減のためこの日は無処置としました。
 6日目:動きがとても良くなり、飲食も進んでいるとのことです。ステロイド剤をこれまでの1/4量まで減量して投与し、ビタミン剤と抗生物質も投与しました。
 7日目:動きが改善され、缶詰を食べているが水を飲まなかったとのことで、この日は点滴を実施しました。ステロイド剤は当初の1/8量まで減らし、抗生剤とビタミン剤も投与しました。
 8日目:飲食しているとのことで、ステロイド剤漸減のため、この日は無処置としました。
 9日目:動きはずいぶん活発になり(写真右参照)、飲食も充分できるようになったとのことです。ステロイド剤を当初の1/8量投与し、治療はこの日を最後としました。
 斜頚はまだ残っていましたが、これは後遺症ということで飼い主さんに説明しました。 本病は、飲食ができるようになるかどうかが大変重要で、幸い今回の症例では、飲食できる状態まで回復することができました。 
初診時の猫、高度の斜頚がみられ、ほとんど歩くことができませんでした。 9日目の猫、後遺症として斜頚は残りましたが、院内を自由に歩けるようになりました。
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