さとう動物病院
 長野県千曲市
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ミニチュアダックスの腸閉塞
 患者さんは4歳のミニチュアダックス(雌)です。骨付きのチキンを食べてから吐くようになった、とのことで受診されました。レントゲン検査で食道および胃内にチキンの骨は確認されず、他の異物も認められませんでした。感染症を疑い、点滴と抗生物質を投与しましたが、3日たっても症状の改善が見られませんでした。さらに詳しく状況をお聞きしたところ、コタツ布団で遊んでいて、ほころびたところから化繊の綿が出ていたことが判明しました。嘔吐が継続していたことから化繊の綿による腸閉塞を強く疑い、全身麻酔を施し開腹しました。その結果、写真に示したように小腸に広範な変性壊死を認め、内腔に異物が触知されました。異物を除去するため小腸を切開しましたが、異物が長すぎて除去するのが困難であり、腸粘膜の壊死も著しく進行していました。そのため変性壊死した小腸を50cmほど切除し、吻合しました。切除した小腸の内腔には、化繊の綿がよれて紐状になり、重度の腸閉塞を起こしていました。単純に腸閉塞を起こしただけでなく、化繊の繊維による刺激を受けていたため、腸粘膜の変性壊死が進行したと考えられました。
 術後、嘔吐はなくなりましたが、小腸の切除部位が広範囲に及んだため、3日間は絶食とし、点滴を行いました。4日目から流動食を徐々に給与し、6日後に退院しました。退院後もしばらくは流動食を給与し、1カ月半後の現在はドライフードを水でふやかして給与しています。
 本症例は小腸の変性壊死が広範囲に及んでいたため、極めて難易度の高い手術でした。吻合した小腸の漿膜も非常にもろくなっており、縫合するのに苦労したほどです。術後、しばらくは腹膜炎と小腸欠損による影響が心配されましたが、幸いなことに速やかに元気になりました。今回は確定診断に時間がかかり、自分の無力さを思い知らされた症例です。唯々、ワンちゃんの生命力に助けられたと実感しています。感謝!!
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