さとう動物病院
  長野県 千曲市
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猫のリンパ腫
 患者さんは13歳の雄猫です。数日前から水のような下痢が続いているとのことで受診されました。体温は38.3℃で平熱でした。食欲はあるものの、体重は1年前のワクチン接種時に5.5kgあったものが、4.3kgまで減少していました。糞便検査では所見は得られませんでしたが、感染症を疑いインターフェロンと抗生物質、下痢止めを処方しました。
 しかしながらその後も水様下痢が継続し、3週間後の受診時には食欲がなくなり、体重は3.9kgにまで減少していました。この際、腹部の触診で硬い芯を含む腫瘤を触知し、レントゲン検査でも陰影を認めました。硬い芯が触知されたことから、異物による腸閉塞の疑いがあり、飼い主さんに説明の上、開腹しました。その結果、腸管膜リンパ節が鶏卵大に腫大し、腸管の漿膜下に微細な白色点が多数認められました(写真)。腸管を入念に調べましたが、異物による閉塞は認められませんでした。これらの所見から、内蔵型のリンパ腫と診断しました。なお血液検査で、猫白血病ウイルスは陰性でした。
 処置は、抗癌剤を投与するとともに、食欲がないことから、嗜好性の高い流動食を与えることにしました。抗癌剤の投与を開始後、食欲はすみやかに回復し、下痢も完全に治まりました。触診で腫瘤は非常に小さくなり、レントゲンでも陰影はほぼ消失していました。現在、治療を開始して4カ月を経過しますが、体重は4.96kgにまで増加し、元気も発病前と変わらないほど回復しました。
 今回の事例は抗癌剤に極めて良く反応しましたが、リンパ腫は悪性腫瘍のひとつであり、今後も注意深く観察をおこないながら治療を継続する必要があります。
 開腹検査で、腸管膜リンパ節は鶏卵大に腫大してました(矢印)。またリンパ球の浸潤を疑う白色点が、腸の漿膜下に多数認められました。
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