さとう動物病院
   長野県 千曲市 
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雄犬の肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)

 患者さんは10歳の雄犬(未去勢)です。半年ほど前から、陰嚢が腫大してきたとのことで受診されました。元気食欲には、とくに異常は認められませんでした。触診で、陰嚢内の左右精巣の下方に、直径4cmほどの腫瘤を触知しました(写真左上印)。陰嚢内の腫瘍と診断し、去勢手術と併せて摘出することにしました。手術は出血を抑えることができる半導体レーザーメスを使用し、再発を防ぐため陰嚢の皮膚をすべて切除する方法で実施しました。摘出後、陰嚢内には結合組織に富んだ白色の腫瘤が認められました(写真右上)。
 腫瘤の病理組織学的検査を実施したところ、境界明瞭な腫瘍細胞が浸潤性に増殖し、腫瘍細胞の細胞質内には、青色を呈する微細顆粒が認められました(写真左下)。細胞質内に認められた顆粒は、トルイジンブルー染色で異染性を示しました(写真右下)。これらの所見から、今回の腫瘍は中等度分化型(II型)の肥満細胞腫と診断しました。
 肥満細胞腫は悪性度の高い腫瘍で、とくに未分化型(III型)の場合は生存率が極めて低く、最も怖い病気の一つです。今回は中等度分化型でしたが、腫瘍細胞が浸潤性に増殖していたことから、再発が懸念されました。術後、抗生物質とともに抗癌作用が報告されているサプリメントを処方したところ、術後の経過は良好です。
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