さとう動物病院
  長野県 千曲市
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ウサギの毛球症(内科的治療例)

 患者さんは1歳半の雌ウサギです。体重は2kg。数日間、ほとんど何も食べていないとのことで受診されました。元気もなく、2〜3日前に下痢が見られたものの、その後、排便はほとんどないとのことです。体温は37.4℃で、平熱より下がっていました。ケージ内に残っていた便は繊維質に乏しく、かなり小粒でした。レントゲン検査を実施したところ、ほとんど何も食べていないはずなのに、胃が膨満していました(写真参照)。腹部の触診で、胃の中に塊のようなものが触知されました。これらのことから、毛球症と診断しました。なお飼料は乾草、キャベツ、市販のウサギフードを与えていましたが、最近は「毛球症予防用の乾燥パパイア」を好んで食べていたとのことです。
 毛球を消化させる目的でパイナップルジュース(自家製の生ジュース)を給与するとともに、消化管の運動促進剤を4日間皮下注射しました。この処置では、多少の排便が見られたものの、食欲はほとんど回復しませんでした。胃の膨満も依然として認められました。
 パイナップルジュースの給与を継続するとともに、消化管の運動促進剤と食欲増進剤を1日2回、通常よりやや多めに経口投与しました。この処置を10日間継続したところ、食欲は徐々に回復し、排便も正常になりました。
 なお飼料は牧草を主原料にした繊維質の多いフードに切り替え、乾草と野菜もこれまで通り与えることにしました。
 その後の受診で、牧草を主原料にした繊維質の多いフードをメインに食べており、排便も正常とのことです。
 ウサギの毛球症は、繊維質の少ない不適切な飼料の給与、ストレス、妊娠などに関連して発生するといわれています。今回の発生は、繊維質の少ない「毛球症予防用のフード」を与え過ぎたことが原因と考えられました。「毛球症予防用のフード」は、小量を繊維質の多いフードとともに与えなければ効果はなく、与え過ぎは今回のように毛球症になってしまいますので、注意が必要です。
 ウサギの治療では、薬の経口投与がとても大変です。当初は注射で処置しましたが、思わしい結果が出ませんでした。最終的には、飼い主さんの努力で、パイナップルの生ジュースとともに、消化管の運動促進剤と食欲増進剤を1日2回、10日間に渡って投与したことにより、回復につながりました。

腹部のレントゲン写真。
ほとんど何も食べていなかったにもかかわらず、胃が膨満しています(矢印)。
幸い胃内にガスの貯留は認められず、完全な閉塞状態ではありませんでした。
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