とう動物病院
  長野県 千曲市

症例紹介

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犬の前立腺肥大
 患者さんは未去勢雄、5歳のコーギーです。血尿が続いたため、当院を受診されました。初診時の尿検査で、色調は正常であったにもかかわらず、強い潜血反応を認め、塗抹でも赤血球を多数認めました(表参照)。前立腺肥大を疑い、肛門より触診を実施しました。その結果、表面がスムースでプクンとした感じの前立腺が触知され、レントゲン検査でも、前立腺の肥大を示す陰影を認めたことから(写真参照)、前立腺肥大と診断しました。
  前立腺肥大の治療には精巣を摘出する外科的療法(去勢手術)が最も効果的であることを説明し、外科的療法を選択しました。
 初診時に去勢手術を実施し、抗生物質(オルビフロキサシン)を処方しました。手術後、排尿がこれまでよりスムーズにできるようになり、尿がきれいになったとのことでした。ところが1週間後に、高度の血尿を示したため再受診されました。尿検査成績に示したように、尿は赤色を呈し、塗抹染色標本で白血球を中程度、細菌を少量認めたことから、膀胱炎を併発したものと診断、抗生物質をアンピシリンに切り替え処方しました。2週目以降には潜血反応もなくなり、膀胱炎の痕跡と考えられる上皮細胞も徐々に減数しました。3カ月以上続いていた血尿は、去勢手術後、完治することができました。
尿検査成績  検査日  初診時 1週間後 2週間後 3週間後 1カ月後

 色調    正   赤色    正    正    正
 混濁    −   ++    −    −    −
 沈渣    ++   +++   +    +    +
 pH     6    5    6    6     6
 潜血反応 +++  +++    −    −    −
 結晶    −    −    −    −    −
 細菌    −    +   −    −    −
 赤血球  +++  +++   −    ++    −
 白血球   −   ++    −    +    −
 上皮細胞  −   ++   +++   ++    +

 培養検査で細菌は分離されませんでした。
膀胱(矢印白)の上に、腫大した前立腺(矢印黄色)が認められます。
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